老人ホームの種類⑧
失恋145日目
- 失恋145日目
- 介護医療院(介護療養型医療施設)とは
- 介護保険施設とは医療・介護と「生活の場」を提供する場
- Ⅰ型とⅡ型、医療外付け型に分けられる
- 費用は人員の手厚さからⅠ型の方が高い
- Ⅰ型は療養機能型A・Bに分かれる
- サービスは医療・介護のほか「生活支援」を重視
- 介護医療院のメリット・デメリット
- 入所までには担当医としっかり相談する
- まとめ
介護医療院(介護療養型医療施設)とは
介護医療院は2018年4月に創設されたばかりの施設。医師の配置について、介護療養病床に相当するⅠ型は入居者48人あたり1人、老人保健施設に相当するⅡ型は入居者100人あたり1人を義務付けられており、たん吸引などの医療設備も充実していることから、要介護者の方のなかでも特に医療ニーズが高い方に対応できます。
看取りやターミナルケアも行っているため、終の棲家としての検討も可能。
ただし、完全個室ではなく、パーティションなどで分割されている場合も多いため、プライバシーの確保には注意が必要です。
なお、伝染病などへの罹患、長期入院が必要な場合は入居できない可能性あるので、その場合は別途施設の担当者と相談してください。
介護保険施設とは医療・介護と「生活の場」を提供する場
介護医療院はどんな施設?
介護医療院では要介護の高齢患者(利用者)に対して、医療・介護だけでなく、生活の場を提供するのが特徴。
医師が配置されているため、喀痰(かくたん)吸引や経管栄養など医療ニーズの高い要介護者の方にも対応できます。
また、人生の最終段階におけるケア(看取り)を支える役割も担っています。
パーティションや家具で仕切られているため、4人部屋であってもプライバシーが守られる点も、介護医療院の特徴のひとつです。
介護医療院ができた背景
介護医療院という制度ができるまでには、紆余曲折がありました。
介護医療院がどのようにできたのか、これまでの高齢者医療の流れを見てみましょう。
病院に長期入院している高齢の患者のうち、「家族での介護が難しく、やむなく入院させている状態」、いわゆる「社会的入院」が問題視されました。
病院から「社会的入院」をなくすため、まず1993年、第二次医療法改正により療養型病床群が創設されました。
療養型病床群とは、長期入院による医療提供の必要な患者が入る施設です。
その後、2000年に介護保険制度がスタートし、介護療養型医療施設が創設されます。
さらに2001年には療養型病床群が療養病床に再編されます。
療養病床は、医療の必要性に応じて「医療療養病床」と「介護療養病床」の2つに分けられました。
医療の必要性が低ければ「介護療養病床」で患者を看てほしいという意向があったのですが、この2つを調査してみると、「ほとんど差がない」という結果になっていました。
これでは2つに分けた意味がありません。
この結果を受けて、「医療は医療機関で、介護は介護施設で」と区分する方針が決定、介護療養病床は廃止する方向性に。
2006年、その受け皿として転換先の介護療養型老健が創設されました。
厚生労働省は、介護療養病床に対して介護療養型老健への転換をすすめていましたが、実際はなかなか転換が進みませんでした。
そのため、介護療養病床は2012年度末で廃止予定となっていたのですが、2023年度末までに廃止と延長されます。
これを受けて、介護療養病床の次の受け皿として2018年に創設されたのが、介護医療院なのです。
Ⅰ型とⅡ型、医療外付け型に分けられる
介護医療院は介護医療院Ⅰ型・Ⅱ型の2つの形態があります。
Ⅰ型は、比較的重度の要介護者に対して医療ケアを提供する介護療養病床に、Ⅱ型は入居者の家庭復帰をリハビリなどでサポートする介護老人保健施設に相当します。
従って、Ⅰ型の方がⅡ型に比べて重い疾患を持っている患者が利用することが想定されています。
また、これらとは別に居住部分と医療機関を併設した医療外付け型があります。
医療外付け型は、「比較的容体が安定した者」を主な利用者としていて、居住部分は個室で13㎡以上と有料老人ホームと同等の広さとなっています。
費用は人員の手厚さからⅠ型の方が高い
介護医療院を利用するのに必要な費用は、Ⅰ型かⅡ型か、形態によって異なります。
食費・居住費、基本的な介護サービス費のほかに、入所者によって必要な介護に相当する費用が加算されます。
もし入所を希望するなら、Ⅰ型とⅡ型どちらの形態なのか、事前に料金を確認することをおすすめします。
ちなみに介護医療院Ⅰ型は人員配置が手厚いため、Ⅱ型よりも料金が高くなっています。
介護医療院でかかる介護サービス費用
ここでは介護医療院で必要な費用のうち、介護サービス費用をみていきましょう。
介護医療院には、Ⅰ型とⅡ型の2タイプがありますが、Ⅰ型はさらに「療養機能強化型A・B」の2タイプに分かれます。
「看護6:1」とあるのは、入居者6人に対して看護師が1人、「介護4:1」とあるのは入居者4人に対して介護士が1人配置されているという意味です。
介護医療院の加算項目
基本的な介護サービスに加えて、プラスアルファのサービスを受けた場合は、料金が加算されます。
以下は主な加算の例です。
初期加算:30円/日
入所した日から起算して30日以内の期間
栄養マネジメント加算:11円/日
基準に適合する介護医療院の管理栄養士が継続的に入所者ごとの栄養管理をすること
緊急時施設診療費(緊急時治療管理):518円/日
入所者の病状が重篤になり救命救急医療が必要になった際、緊急的な治療管理を行った場合
経口移行加算:28円/日
医師、歯科医師、管理栄養士などが共同して、入所者ごとに経口移行計画を作成し、計画に従って支援が行われること
重度認知症疾患療養体制加算(Ⅱ):100円/日(要介護5の場合)
入所者のすべてが認知症であり、精神保健福祉士や看護職員が一定数以上配置されていることに加え、精神科病院との連携などの要件を満たすこと
このほかに、排泄ケアや口腔ケアに対する加算も設定されています。
入所を希望する介護医療院がどの基準であるか、確認しておきましょう。
居住費・食費・介護サービス費以外にもテレビカード代など、個別でかかる費用もあります。
なお、介護保険の自己負担分が高額になったら、高額介護サービス費が市町村から支給されます。
支払いが厳しい場合には、施設の生活相談員に相談しましょう。
Ⅰ型は療養機能型A・Bに分かれる
介護医療院には、Ⅰ型とⅡ型の2タイプがありますが、Ⅰ型はさらに療養機能強化型A・Bの2タイプに分かれます。
療養機能強化型の要件
介護医療院が療養機能強化型として認定されるためには、次のような要件を満たす必要があります。
- 入院患者のうち、重篤な身体疾患がある者、および身体合併症がある認知症高齢者が一定割合以上であること
- 入院患者のうち、一定の医療処置を受けている人数が一定割合以上であること
- 入院患者のうち、ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上であること
- 生活機能を維持改善することを目的としたリハビリテーションを実施していること
- 地域に貢献する活動を実施していること
サービスは医療・介護のほか「生活支援」を重視
介護医療院では、その名称のとおり、介護だけではなく、必要に応じた医療ケアを受けられます。
また、生活の場所でもあるため、病院より広い空間(老健と同じ面積=8㎡)で過ごすことができます。
日常生活におけるサービスの内容
介護医療院は、入居者にとって医療や介護だけでなく、生活の場を提供する施設です。
入居者が安心して暮らせる「住まい」となるよう、プライバシーの確保などに務めています。
また、地域社会とのつながりを持つために、地域住民やボランティアとの交流も盛んに行われます。
医療ケアの内容
喀痰(かくたん)吸引・経管栄養などの医療ケアが必要な利用者を受け入れるほか、人生の最終段階におけるケア(看取り)も行われます。
投薬や処置、検査なども必要に応じて提供されます。
こういった手厚い医療ケアが、「病院入院するほどではないが、老人ホームでは不安」という利用者や家族の安心感につながっています。
介護サービスの内容
介護医療院では、ほかの介護施設と同様に、入浴の介助、排泄の介助、食事の介助などのほか、洗濯や掃除といった日常生活上の世話も行われます。
さらに健康管理や、機能訓練としてのリハビリテーションも行われます。
介護医療院のメリット・デメリット
メリット
介護医療院は医師が配置されているため、介護と同時に医療のケアを受けられることが最大の特徴。
そのため、喀痰(かくたん)吸引・経管栄養などが必要な重度の利用者が利用できます。
病院に併設されてつくられることが多いため、万一容体が悪化しても、すぐに関連病院に受け入れてもらえる可能性も高いです。
また、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーションスタッフが配置されますので、生活機能の向上になるリハビリを受けることもできます。
看取りやターミナルケアにも対応しているので、もし症状が重症化しても、そのまま同じ施設で最期まで必要な介護・医療ケアを受けることが可能な点も、介護医療院の大きなメリットですね。
デメリット
介護医療院のデメリットとしては、主に費用とプライバシーの2点が上げられます。
費用面については、介護保険サービスの利用者負担金だけでなく、食費・居住費がかかります。
入所が長引けばトータルの費用が高額になることもありますので、支払いが難しくなる前に生活相談員に相談しましょう。
介護医療院の居室は、完全な個室ではなくパーティションや家具などで仕切られている場合もあります。
病院ほどではありませんが、隣の物音が気になる方は注意が必要です。
一般的な老人ホームの個室と比較した場合、プライバシーの確保という点で若干不安を感じる方もいるかもしれません。
入所までには担当医としっかり相談する
介護医療院に入所するためには、担当医の協力が必要です。
まず、本人、家族、診療所、病院、担当ケアマネジャー、老健、有料老人ホームなどから介護医療院の入所担当者に電話します。
入所担当者は地域連携室のことが多いです。
次に、入所担当者が入所の日程を調整して、調整が済んだら入所となります。
入所希望者の症状によっては、入所担当者が担当医に相談を行う場合があります。
また、本人の症状を確認するため、かかりつけ医や入院担当医師からの紹介状や、担当ケアマネジャーからの情報提供書を求められます。
入所にあたっては、周囲の協力が必要なため、担当医やケアマネジャーによく相談したうえで決めることをおすすめします。
まとめ
海外では多くの場合、高齢者のケアを行う施設は、介護が必要な段階ごとに役割が明確に位置付けられ、一本化されています。
これに対して日本では、どの施設がどの役割を担うかがあいまいで、明確になっていないため、利用者や家族にわかりにくい制度になっています。
介護を必要とする高齢者にとっての選択肢の一つとして誕生した介護医療院ですが、まだまだ浸透していません。
ただし介護療養病床から介護医療院への転換が見込まれるので、その数は徐々に増えていくと思われます。